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今回の記事のポイント
・エクセル管理のメリット
・エクセル管理のデメリットと対策

 

前回の記事ではインシデント管理とは?というテーマで振り返りを行い、改めてインシデント管理の重要性をお伝えしましたが、今回は”エクセル”について記載したいと思います。

前回も述べていますが、エクセルを使用してインシデント管理をされている企業は数多くあるのではないでしょうか。

今回はエクセルを用いる事でのメリット・デメリットと注意点を記載していきますのでご参考になれば幸いです。

エクセルを使用することのメリット

まずはエクセルのメリットをご説明します。

エクセルのメリットなんて…と普段から使っている方は考えるかと思いますが、インシデント管理という目線でみた時のメリットを挙げていきます。

① スタートアップが容易

一般的なIT企業のPCにはMicrosoft Officeはほぼ当たり前と言われるほど導入されています。そのため別途ソフトウェアを導入するなど、追加費用をかけずに始めることが可能です。

「とりあえずエクセルでイメージを作ってみよう」といった取っつきやすさは、エクセルに勝るものは無いかもしれません。

② 教育に掛ける時間を短縮できる

新たにソフトウェアを導入すると、有識者による操作教育等が発生します。しかし先ほども記載しましたが、エクセルの場合は、すでに使用されている方が多いため、基本の操作教育に工数が掛からないという強みがあります。

③ 業務内容に合った複雑な処理の作りこみが出来る

マクロの組み込みや関数と数式を組み合わせる事で、エクセルファイルに複雑な処理を組み込む事が出来ます。独自ツール(の様なもの)を作りこめるので、企業の業務内容に合ったものが作成出来ます。

②の「教育に掛かる時間」と言った分で補足すると、エクセルはIT企業に関わってきた方なら誰でも触れてきた可能性が高いと記載しました。

実はこれがかなり重要で、部下と上司がどちらも使い方を知っているという事は、知識を共有しあい、悪い点は指摘しあえるという大きなメリットがあります。(例:こういう風に罫線を引くと見やすく作れるのか…といった成長や、色味が原色に近いからもうちょっと淡い色にした方が良いかも?これはこうした方が良いのでは?という改善案も出やすくなります)

ましてやエクセルは様々な使い方が出来ますので、作り方や使い方に個人差が生じます。仕様書・企画書を作ってきた人もいれば、集計表やグラフを非常にうまく作れる人もいるでしょう。

そういった方々の「魅せ方」や「テクニック」を共有して自分たちが作るインシデント管理をより良いものにカスタマイズ出来るのも、エクセルの大きな強みだと思います。

エクセルのデメリットや注意点

エクセルはメリットも多い反面、デメリットや注意点も数多く存在します。IT部門をはじめ、エクセルファイルを複数人で管理・編集するケースが多いと思いますが、ここではデメリットだけでなく、運用回避の方法もご案内したいと思います。

◆ 機能的デメリット

▲ 複数人で使用する場合、同時編集ができない

エクセルファイルは排他処理が掛かるため複数人で編集することが出来ません。作業前後に連絡したり、通知機能を使用して作業後に記載する、といったように、あらかじめ排他処理が掛かるものとして運用しましょう。

▲ 履歴を追うことができない

複数人で変更を掛けることが多いエクセルファイルの場合、「いつ」「誰が」「どの端末で」修正や削除したか履歴を追うことができません。気づかないうちに誰かがセルの内容を消してしまったり、書式を書き換えてしまった場合など、予期せぬトラブルが発生した際に原因の特定が困難です。

〇 対策・運用での対応方法

  • 履歴を残すセルを作成する+入力部分以外はシート保護をする。

履歴を記載していくセルを指定し、それ以外のセルはシート保護をするなどして、操作ミスを防ぐ事ができます。ただし編集の際はその都度、保護の解除など対応が必要となります。

  • コメント機能を使う+エクセルでユーザー名を設定し、コメントとして残す。

エクセルのオプションでユーザー名を設定し、コメントを追加することで、コメント挿入時に自動でユーザー名が付加されます。あとはエクセルのショートカットキーを使うことで、「名前」「日付/時刻」がフォローできるかと思います。

※「Ctrl」+「;」現在時刻
※コメント機能については”セルの検索”で検索対象にならないので注意が必要です。

補足1:エクセルのユーザー名を設定するメリットとしてもうひとつ、エクセルファイルに排他処理が掛かっている状態では、そのファイルを開いているエクセルでのユーザー名が表示されるため、どの端末で開いているか等の原因特定がしやすくなると言えます。

補足2:更新日時はエクスプローラーのプロパティからある程度追うことは可能ですが、PCを共通で使用する企業の場合は、そのエクセルを使用するユーザーが毎回変わるため、調べることができません。

▲ 属人化によりメンテナンスが困難に

エクセルファイルに複雑な処理やマクロが組まれている場合にはメンテナンスが困難になるリスクが付きまといます。例えば前任者が組み込んだマクロなどを修正する必要がある場合、後任者への引継ぎが行われていないと中身がブラックボックス化してしまい、結局別の方法を探すか新たに作り直すという事態になってしまいます。

〇 対策

本来はマニュアル作成も含めた引継ぎを行うのがベストでしょうが、前任者ならまだしも前前任者などが作成したマクロなどは既にブラックボックス化してしまっているのでしょうか。このような事態を防ぐため、エクセルでマクロやツールを作成する際には、誰でもメンテナンスしやすいように作成することがポイントです。

例えばパラメーターを自動取得すると便利ですが、後任者のことも考慮し、敢えて手入力させるようにするとか。やむを得ず自動取得にする場合は、簡易マニュアルを作成し、コメントをうまく残してコードを見やすく作るように心掛けましょう。

◆ 偶発的損失

・ファイル破損の危険性がつきまとう

何らかの原因があると思われますが、エクセルを使用して謎のフリーズを起こし、そのファイルが破損ファイルとして開けなくなった経緯がある方もいるのではないでしょうか。

〇 対策

エクセルファイルは予期せぬトラブルでファイル破損する可能性があるため、当然のことながら定期的なバックアップが必須です。ファイルの更新頻度によりますが、バックアップは自動・手動で切り分けて、企業にあった使い方を選択していただければと思います。

      • 手動バックアップ - 世代・版数で管理し、保存場所にも注意する
      • 手動バックアップ - エクセルの自動バックアップ設定をする。簡易的なパッチファイルを作成する

※バックアップの具体的な取り方については次回記載したいと思います。

~まとめ~

今回はエクセルのメリット・デメリット(注意点)をまとめてみました。これだけ注意点が多くなってしまうのも、エクセルが使いやすさに優れていて使用頻度が高いからこそだと思います。

次回は、エクセルを利用してインシデント管理を行うと…?です。

実経験をもとにしたリスク紹介などを行いたいと思います。

≫第3回 エクセルを利用してインシデント管理を行うと…(リスク紹介など)
≪第1回 インシデント管理の必要性

◆筆者紹介

株式会社DXコンサルティング
宮崎 礼(みやざき れい)

株式会社DXコンサルティング(旧 株式会社フェスITSM事業部)に所属し、2019年11月よりManageEngineのITSM分野のアンバサダーとして従事。
大規模病院のITサービスデスクにおいて運用サポートを経験。10年間で1万5000件を超える案件に対応。電子カルテの問い合わせ窓口や操作研修の実演、端末・プリンタの設置対応をはじめ、カルテのテンプレートを500件以上作成。電子カルテの頻用項目の簡略化による医師の入力負担軽減に加え、後利用・研究に活かせると言った所謂”医療ビッグデータへの活用”に繋がる部分で、多数支援を行った。
院内会議の調整や関係各所との折衝を含め、医師や看護師といった方々と積極的にコミュニケーションを取ることで、院内の負担軽減に繋がるような提案を繰り返し行ってきた。

 


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